HOME ローハスってなに? ローハスインタビュー ローハス対談 地球環境を考える MakeLohasブログ 用語集
ローハスインタビュー

Vol.18 [2007年2月28日更新]
鉾井 修一 氏 プロフィール
京都大学大学院 工学研究科 建築学専攻 教授
建築環境計画学講座 生活空間環境制御学分野
 PDF形式でご覧になりたい方はこちら


冬は加湿をすれば良いというわけではない

まず高松塚古墳を例にお話すると、あそこは湿度調整が難しくて、カビが大きな課題となっています。しかし、だからといって乾燥させたらいいかというと、表面の漆喰壁が歳月のためにぼろぼろなので、逆にかさかさになっていつ剥離するかわかりません。それと壁面には温度分布もあるので、そこもまた厄介です。もし温度さえ一様であれば湿度が高くても結露は起きません。温度分布があると湿気も移動して、冷たい壁面で結露してしまう。「加湿」しようというのはよくありません。温度分布を考慮しながら「調湿」する必要があるのです。

住宅も同じなのです。高気密、高断熱住宅が普及してきて、今まで結露していた窓面も断熱されて結露しにくくなってきました。それでも冬は乾燥するからと加湿器をつけると、やっぱり温度分布があるからどこかで結露してしまう。住宅の壁面などにはいわゆる熱橋というものがあり、そこは熱が伝わり易い部分になります。この熱橋は外の冷たさが伝わってきますから、周りの壁より温度が低く分布ができます。このときに加湿器を使うと、ここで結露が起きます。もともと加湿は人の健康のために行うのですが、単純にやりすぎると結露が起き、それがカビの原因になり、さらにはアレルギーなど、悪循環が起こるわけです。

木材のようにある程度湿気に適応性のある材料を使っても、加湿器をかなり運転するような生活スタイルでは湿度の変動が当然起こります。ですから、住まいの材質を考えるようなある種のローテクによって乾燥や高湿を抑えつつ、それでもどうしようもない時に、加湿器のような機器を最低限使うようにするとよいでしょう。

私の理想を言うと、北海道の家のように全館空調システムが望ましいですね。部屋間の温度分布があるという状況はやはり不快ですし、結露の問題からしても温度分布は良くないですから。全室床暖房なんていうのは非常にいいかもしれない。ただ、住まい手にとって温熱的に全く負担がないという環境が、本当に人間の健康にいい影響をあたえるのか?という面では議論の余地があると思っています。これについては医学的な調査をして、実験的なことを行わない限り答えは出てこないでしょう。それと省エネの問題もありますし、私としてはまず、均一な空間を最低限のベースにしてみるという方向性で考えていくことがいいと思います。


ロハス的に考えた今後の空調技術

鉾井 修一  氏
古墳もそうですが、地中の環境というのは面白いですよ。5mより深いところの地中の平均温度はその地方の一年間の平均気温に近くなります。地中に穴を掘ると、そこの温度が季節によって外気との時間遅れを伴いながら変動するのです。地中の空間へは、地上のような外部の気温変動が地面を通してゆっくりと伝わります。ですから夏から冬にかけての地下は地上近くの上部のほうが温度は高くて下部が低く、冬から夏にかけて今度は地上から遠い下部の温度が高くなります。ちょうど半年前の熱が残っている感じですね。これをうまく利用すると、夏に冷熱が取れるし、冬に温かい熱が取れることになります。地熱利用として研究が進められている分野です。もちろん、外気と地中の温度差が小さくなってしまい、なかなか利用が難しいという課題もあります。

これを別の視点で考えてみると、また面白い。一年の平均気温が地下で形成されるということは、それは一年中一定の熱をためる容器として使えることになるのです。積極的に熱や冷熱を溜める技術として地中蓄熱とか、地盤畜熱と呼ばれます。日本では地盤蓄熱はあまり利用されていません。

その理由として、日本は雨が多いので地盤に水が溜まり易く、地下水位が高い、湿気も非常に多いということがあります。一方でヨーロッパ、カナダでは半地下の家というのは当たり前です。私はオタワで1年間暮らしましたが、そこの住宅にはほとんど地下室があります。私の友人の家では、自分の趣味の絵を描くためのアトリエに使っていました。日本でも、地下室で趣味を楽しむようなライフスタイルを提案しながら、湿気の制御を考えていくとよいでしょう。地下の空間というのは温熱環境からすると、とても合理的でいい空間なのです。
最低限のベース空調に、このような地熱活用技術を実用化して付加できると、それはロハス的な空調の一つになるのではないでしょうか。


本日のキーワード
快適性と温度・湿度・気流、加湿と除湿ではなく調湿が重要、地中蓄熱の利用

MakeLohas 編集部コメント
住まいの快適性というと、温度のことばかり考えがちではないでしょうか。しかし実際には温度を変化させると湿度も変化しますし、気流感も人には大きな影響を与えます。快適かつ省エネ性も求めるのであれば、これらすべてをきちんと考えなくてはいけません。
鉾井先生がおっしゃるように家全体の均一性を考えながら、改めて空調というものを見直してみてはいかがでしょうか。
MakeLohas 編集部


前のページへ | 1 2 3 | 次のページへ

こちらからこのページをPDF形式でご覧になれます。 PDFファイルを表示
PDFファイルをご覧いただくためにはAdobeReaderが必要です。
AdobeReaderをお持ちでない方は、こちらからダウンロード(無料)してご利用ください。

▲ページトップへ

Contents
ローハスインタビュー
Vol.23:[2007/10/12]
山本 義春 氏
東京大学大学院教育学研究科
身体教育学講座教授 (教育生理学分野担当)
Vol.22:[2007/3/29]
片山 右京 氏
Team UKYO 代表 大阪産業大学客員教授
Vol.21:[2007/3/28]
岡安 雅人 氏
木造住宅設計所 萌芽舎一級建築士事務所 主宰
Vol.20:[2007/3/23]
小町 晴久 氏
小町建築アトリエ 代表
Vol.19:[2007/3/16]
中川 重年 氏
京都学園大学バイオ環境学部 教授
全国雑木林会議世話人
Vol.18:[2007/2/28]
鉾井 修一 氏
京都大学大学院
工学研究科 建築学専攻 教授
Vol.17:[2007/2/23]
甲斐 徹郎 氏
株式会社チームネット代表取締役
エコロジー住宅市民学校 主催
Vol.16:[2007/1/31]
涌井 雅之 氏
桐蔭横浜大学 特任教授
Vol.15:[2006/11/30]
米森 公彦 氏
一級建築士事務所
米森建築設計事務所 主宰
Vol.14:[2006/9/22]
安月 浩 氏、絹山 実 氏
ガス暖炉メーカー
株式会社ダンロックス
Vol.13:[2006/8/25]
丸谷 博男 氏
建築家
一級建築士事務所 (株)エーアンドエーセントラル 代表
Vol.12:[2006/6/29]
長房 直 氏、加瀬澤 文芳 氏、中安 博司 氏
住まいづくりフォーラム
Vol.11:[2006/6/23]
佐々木 龍郎 氏
建築家
株式会社佐々木設計事務所 代表取締役
Vol.10:[2006/3/30]
尾島 俊雄 氏
早稲田大学建築学科 教授
Vol.09:[2006/3/17]
堀尾 正靭 氏
東京農工大学大学院
共生科学技術研究部 教授
Vol.08:[2006/2/13]
望月 久美子氏
株式会社東急住生活研究所 所長
住文化研究協議会 企画委員会 委員長
Vol.07:[2006/1/27]
金子 成彦 氏
東京大学大学院
工学系研究科機械工学専攻 教授
Vol.06:[2005/12/19]
坊垣 和明 氏
独立行政法人建築研究所
首席研究員
Vol.05:[2005/11/28]
駒城 素子 氏
お茶の水女子大学
生活科学部人間・環境科学科 教授
Vol.04:[2005/10/5]
山本 良一 氏
東京大学生産技術研究所 サステナブル材料・国際研究センター 教授
Vol.03:[2005/9/9]
秋元 孝之 氏
関東学院大学工学部建築学科 教授
Vol.02:[2005/8/19]
尾島 俊雄 氏
早稲田大学建築学科 教授
Vol.01:[2005/7/29]
小畑 晴治 氏
独立行政法人都市再生機構
都市住宅技術研究所 所長

私たちについて著作権&リンクについて個人情報のお取り扱いについてサイトマップお問い合わせ
Copyright 2008 TOKYO GAS Co., Ltd. URBAN LIFE RESEARCH INSTITUTE All rights reserved.