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[2006年3月17日更新]
| 堀尾 正靭 氏 |
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東京農工大学大学院
共生科学技術研究部 教授 |
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今回は東京大学の金子先生にご紹介いただきました、バイオマス研究の第一人者、堀尾先生です。堀尾先生は物質の反応、粉体、流動層などの研究を始めとして、環境を考えたバイオマス、分散型エネルギーシステムといった様々な分野の研究をされています。さらにはご自身の研究を広く活かし伝えていくために、工学分野だけでなく文化や歴史まで踏み込んだ取り組みをされています。ぜひ堀尾先生のお話をご覧ください。 |
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| ■人類が1000年以上生存するために必要なエネルギー源『バイオマス』 |
まずは私の取り組みの一つであるバイオマスについて簡単に説明しておきましょう。
エネルギー源にもいろいろありますが、その中で生物資源(bio)、つまり有機物として存在する量(mass)的なものをバイオマスと呼びます。バイオマスは地球上に太陽エネルギーと植物の光合成などの活動が続く限り枯渇することなく生成される再生可能なエネルギーです。
バイオマスの利用で地球上のCO2を循環させることができますから、地球温暖化の抑制に繋がるカーボンニュートラルなエネルギー源であるといえるわけです。バイオマスには間伐材のような木質系のものから、海草、生ゴミ、下水汚泥など、とにかくいろいろな種類のものが地理的に薄く広く存在しています。これらを経済的な側面からも検討してうまく利用していくことが、人類がこの先1000年レベルで生存していくために必要なことなのです。 |
今でこそ私はバイオマスがとても重要なものなんだ、とお話ししていますが、実は最初はそれほど必要性を感じていなかったのです(笑)。もともと私は石炭の研究をしていました。だから石炭は石油などと違って、あと500年は枯渇せずに採掘できると知っていました。
クリーンな水素だって石炭から作ればいいし、何の問題もないではないかと思っていました。でも、あるとき気づいたのです。500年『しか』保たないんだって。500年もあれば科学技術も発達して、新しくエネルギーを得る術が確立するかもしれない。でもそれは絶対できるという話ではなくて、逆に技術確立に失敗して500年後に科学技術社会が崩壊し、中世に戻ってしまう確率も残されている。だとしたらやはり近代というもののエッセンスを維持しながら生存していけるシナリオを構築するために、今から再生可能エネルギー利用システムを構築することが重要だろうと考えるに至りました。
では再生可能エネルギーといっても何がいいのか?風力、水力、太陽光・・・。これは一種の消去法です。風力は風が吹かないとエネルギーが取り出せない。ちょっと気まぐれです。水力はいいけれども河川利用の規制だとか、規模の問題とか制度的な課題がある。太陽光利用は、安くはなったのだけれども、まだまだコストが掛かり過ぎる。たくさん設置すればそれでいいということにはならない。
残るは、材料にも使え、森林環境にもかかわる広く深い意味を持つバイオマスですが、これの積極的な利用は深い世界で面白そうですし、重要だ、やらなければと考えました。もう7〜8年前のことです。政府も2002年12月にバイオマスニッポン総合戦略を閣議決定し、経済産業省も、農林水産省も、国土交通省も、環境省も、文部科学省も、いろいろな形でバイオマス利用の促進を図ろうとしています。 |
そういったバイオマスを考えるとき、私はそこにもう一つ大切な側面があると考えています。それは、バイオマスが薄く広く国土全体に広がっている分散型の物質資源でありエネルギー資源であるからこそ、人の環・経済の環が農山村を含む日本全土にみなぎっていかない限り、その十分な活用ができるはずがないということに関係しています。
また、森に恵まれているわが国では、つい50年前までは薪や炭の利用が盛んでまさに「バイオマスニッポン」だったのですから、1960年ごろから急速にバイオマス離れして、石油漬け生活に鞍替えしてしまったこの半世紀弱のいろいろな前提条件を見直してみないといけないということにも関係します。
別の言い方をすればバイオマスは、日本が本来継承すべき文化、失ってしまった文化をもう一度取り戻すきっかけを作っている可能性がある、ということです。本当に、昭和30年代ごろからどんどん工業化、都市化が進みましたよね。プラスチックや金属、コンクリートを大量に利用して。身近なところでは公園にコンクリートで作った偽木が立っていたりします。木造住宅でも輸入外材や集成材の家屋が大半です。昔の農家のようなねじれた梁のある豪快な空間を実現することはほとんど不可能です。
どうも利便性を追い求めすぎて、自分達を憩いの無い空間に追い込んでしまったのではないでしょうか。これは都市に限った話ではなく地方の農村でも同じで、伝統的文化や美しい景観が絶滅の危機に瀕してしまっています。 |
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